住宅の省エネ・脱炭素について

気候変動問題に対する世界の動き

近年の研究では、「人間の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない」と断言されています。
すでに産業革命(18世紀半ばから19世紀頃)に比べて、世界の平均気温は1℃程度上昇したとされ、こうした中、世界各国は2015年のパリ協定において、『世界の平均気温の上昇を、産業革命以前に比べて2℃より十分に低く保ちつつ(2℃目標)、1.5℃に抑える努力は追及する(1.5℃努力目標)』に合意しました。
さらにその後、気温上昇を約1.5℃に抑えるためには、2050年前後にCO2排出量を正味ゼロにする必要があるとされたことから、各国はそれぞれ目標を掲げ、その達成への取組を加速させています。

表1温暖化に伴う極端現象の変化

IPCC 第6次評価報告書 第1作業部会報告書を元に作成(1850~1900年における頻度を基準とした増加を評価)

  • ※1温暖化の進行に伴う極端現象の頻度と強度の増加についての可能性または確信度:極端な高温は「可能性が非常に高い(90-100%)」 大雨、干ばつは5段階中2番目に高い「確信度が高い」
  • ※2極端現象の分析対象の地域:極端な高温と大雨は「世界全体の陸域」を対象とし、干ばつは「乾燥地域のみ」を対象としている。
  • ※3ここでは農業と生態系に悪影響を及ぼす干ばつを指す。

我が国における影響と目標

気候変動の影響は、自然災害など様々な形で私たちの生活に影響を及ぼし、その影響を日々実感するまでに至っています。
我が国は地球温暖化対策の取組を加速させるため、 2020年に 「2050年カーボンニュートラル」を宣言し、2021年には「2030年度(2013年度比)46%減、さらに50%の高みに向けて挑戦」という新たな目標を掲げました。

表2気候変動による影響例

水環境・
水資源、自然
災害・沿岸域

  • 大雨の発生頻度の上昇、広域化により、土砂災害の発生頻度増加

自然生態系

  • 夏期の高水温による珊瑚の大規模な白化

健康

  • 熱中症による搬送者数、死亡者数が増加(2018年に1500名死亡)
  • ヒトスジシマカ(デング熱を媒介)等の感染症媒介生物の生息域が拡大

農林水産業

  • コメの収量・品質低下(一等米比率の低下等)
  • 回遊性魚類の分布域が変化(スルメイカ、サンマの漁場縮小等)

産業・
経済活動、
国民生活・
都市生活

  • 災害保険金の支払増加による保険会社の経営への影響
  • 農作物の品質悪化等による食料品製造業への悪影響
  • スキー場での積雪不足等によるレジャー産業への悪影響
  • 気候変動による紛争リスク等、安全保障への影響

出典:環境省・変動影響評価報告書(2020年12月)

家庭の省エネ化に向けた取組

私たちの日常生活において、世帯当たりに使用するエネルギーはこの半世紀の間に約1.8倍に増加しました。
一方で、現行の省エネ基準を満たす住宅は、わずか13%程度に留まっています。
これらのことは、省エネの大きな可能性を秘めていることを示唆しています。
脱炭素社会の実現に向けても、2030年度の排出削減目標として、家庭部門では66%削減(2013年度比)が盛り込まれています。

  • 国土交通省調べ(2023年)

図1家庭の用途別エネルギー消費の推移

エネルギー白書2024(資源エネルギー庁)より作成

2030年度に家庭部門におけるCO2排出量66%削減(2013年度)という大きな目標に向けて、その排出量の約5割を占める冷暖房給湯について重点的に取り組む必要があります。(図2参照)

図2家庭部門の用途別CO2排出割合

出典:環境省 家庭部門のCO2排出実態統計調査(令和2年)

冷暖房
窓リノベ子育てグリーン

暖房は、特に多くのエネルギーを消費し、ガスや灯油など使用する燃料の影響もあり、大きなCO2を排出します。四季の温度差の激しい日本では、寒冷地はもちろん全国で冷房よりも暖房により大きなCO2を排出します。

冷暖房によるCO2の排出削減には、住宅の断熱性能を高め、暖房時は、家の中の暖めた空気と熱を外に逃がさない、冷房時は、外の熱い空気や熱を家の中に入れないことが有効です。
中でも、開口部(窓、ドア)における熱の流失入は住宅全体の6~7割に及ぶとされ、壁や屋根に比べても大きな割合を占めます。

図3住宅における熱の流失入割合

参照:一般社団法人日本建材・住宅設備産業協会 / 平成11年省エネ基準レベルの断熱性能の住宅での試算例

これは、我が国の住宅における開口部は、熱の流失入量が大きい「アルミサッシ+単層(1枚)ガラス」の組み合わせが占める割合が約7割※3に及ぶことが原因と考えられています。

我が家の窓やドアを見直し、高断熱の「樹脂サッシ+複層(2枚以上)ガラス」などに交換し、高断熱化を図ることで、CO2排出の削減に貢献することができます。
本キャンペーンでは、省エネ基準を満たす幅広い窓やガラスを対象に補助を行います。
特に断熱性能が高い窓製品は、先進的窓リノベ2025事業により高い補助を受けることができます。

  • ※3住宅・土地統計調査(平成30年)から環境省算出

一緒にリフォームでもっと省エネ 子育てグリーン

  • 躯体の断熱改修

給湯
給湯省エネ 子育てグリーン 賃貸集合給湯省エネ

石油やガスに対する依存率の高い給湯器は、地域によらず家庭部門の大きなCO2排出割合を占めます。(図2参照)

給湯器のCO2の削減には、古い給湯器から高効率給湯器への交換が有効ですが、省エネ効果の低い古いタイプの石油やガス給湯器は安価で故障が少なく、なかなか高価な高効率給湯器に交換が進んでいない状況があります。

表3高効率給湯器の種類

家庭用燃料電池
(エネファーム)

給湯省エネ

ガスから水素を取り出し、
空気中の酸素と化学反応させて電気を作り、
その時に発生する熱でお湯も沸かす仕組みです。

電気ヒートポンプ・ガス瞬間式
併用型給湯器
(ハイブリッド給湯機)

給湯省エネ 子育てグリーン

エコキュートとエコジョーズを組み合わせて、
必要量のお湯を沸かす仕組みです。
使用量に対して湯量を最適化することで、
電力とガスの無駄を省きます。

ヒートポンプ給湯機
(エコキュート)

給湯省エネ 子育てグリーン

ガスや灯油を使用せず、
電気の力で熱交換機の冷媒を圧縮し、
高温になった冷媒でお湯を沸かす仕組みです。
深夜電力や太陽光発電の電気を利用することで、
電力を有効に利用します。

潜熱回収型ガス給湯器
(エコジョーズ)

子育てグリーン 賃貸集合給湯省エネ

ガスでお湯を沸かす際に出る排熱を利用し、
あらかじめ水を温めることにより、
お湯を沸かす際に必要なガス量を減らす仕組みです。

潜熱回収型石油給湯機
(エコフィール)

子育てグリーン 賃貸集合給湯省エネ

灯油でお湯を沸かす際に出る排熱を利用し、
あらかじめ水を温めることにより、
お湯を沸かす際に必要な石油量を減らす仕組みです。

我が家の古い給湯器を見直し、高効率給湯器に交換することで、CO2排出の削減に貢献することができます。
本キャンペーンでは、上表の高効率給湯器を対象に補助を行います。

一緒にリフォームでもっと省エネ 子育てグリーン

  • 太陽熱利用システム
  • 高断熱浴槽
  • 節湯水栓

建築物の省エネ性能表示
(省エネ性能ラベル)制度について

建築物の省エネ性能表示制度は、販売・賃貸事業者が建築物の省エネ性能を広告等に表示することで、
消費者等が建築物を購入・賃借する際に、省エネ性能の把握や比較ができるようにする制度です。

省エネ性能の把握または
推定が…

省エネだけじゃないうれしい効果

住宅の省エネ化はカーボンニュートラルへの貢献はもちろん、私たちの生活にたくさんの恩恵もあります。

光熱費の削減

エネルギー消費の少ない省エネ住宅は、当然光熱費が安くなります。
10年、20年と住み続けていくうちに、その差はどんどん広がっていくので、
早めのリフォームが断然お得です。

図4年間の光熱費比較

  • 太陽光発電による売電は含みません。
  • 各数値はシミュレーション用に試算したもので、実際の光熱費を保証するものではありません。

出典:一般社団法人 住宅生産団体連合会発行「快適・安心すまい・なるほど省エネ住宅」

エネルギー価格高騰への対応

昨今の国際エネルギー市場の混乱や国際的な供給不安による、エネルギー価格の高騰への対策も必要です。
危機に強いエネルギー供給体制の構築に向けて、家庭部門の省エネ化をより進めることが重要です。

図5電気・ガスの消費者物価指数(前年同月比)

結露を減らし、カビの発生を抑えます

結露は、家の中の温度と外気の温度差が原因で発生します。
高断熱の窓やドアは熱を伝えにくいため、サッシやガラスが冷たくなりにくく、結露の発生を抑えます。
結露は、サッシ周りのカビの発生の原因になるだけではなく、木造住宅の木材を腐らせる原因にもなります。
窓やドアの交換は、家族の健康や住宅を長持ちさせることにも役立ちます。

図6結露の発生

いわゆる「ヒートショック」等のリスクを低減
断熱は健康面でもメリットがあります

冬季は高齢者による入浴事故リスクが増加する傾向にあり、高齢者の家庭内での溺死の死亡者数は高い水準で推移しています。
断熱リフォームで家の断熱性能を上げることで、部屋間の温度差をなくし、家全体を暖かくすることで、健康面へのメリットも期待できます。

<参考>リーフレット「省エネで健康・快適な住まいづくりを!」
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/shoenehou_assets/img/library/kenkosyoene.pdf

図7日本全国の年間の交通事故死亡者数と入浴死亡者数の推測値

  • 出典:消費者庁 令和4年12月27日 News Release「年末年始に増加する高齢者の事故に注意しましょう! -浴室での溺水事故、餅による窒息事故、掃除中・除雪中の転倒・転落事故等に注意-(別添)高齢者の事故に関するデータとアドバイス等」
    総合研究報告書警察庁「令和2年における交通事故の発生状況等について」